HOTEI.COM

PARADOX OFFICIAL INTERVIEW

取材・文:平山雄一

――そういう景色を見て思ったことを、歌にしたいんだっていう気持ちを、森さんが受け止めてくれたんですね。

▼今回、森さんは僕の中のイメージを、丁寧に時間をかけて的確な言葉に変換してくれた。しかしサウンドを構築していくうちに、曲の持つ世界観が大きく変化してしまったり、また僕のイメージが明確になればなるほど、森さんとの視点にズレが生じてしまったりして、一つの詞を何度も何度も一から書き直してもらいました。森さんが根気よく僕と向き合ってくれたおかげで、どの曲も高いクオリティに達することができたと感謝しています。

――サウンドも思う存分、自分のやりたいことを追求できましたか?

▼そうですね。毎日毎日プライベートスタジオの鍵を開けて、機材の電源を入れて、不慣れなソフトウェアで打ち込みをやって、自分でボタンを押してギターや歌の録音までやりました。ギターだけではなく、キーボード、打ち込み、録音、編集まで手がけた初めての作品となりました。
歌もサウンドも、一度出来上がったものでも「いや、違う!」と感じたら、理想に近くなるまで何度も録りなおしました。いつも作品を作り終えて聴きなおすと「あ、また力を入れ過ぎちゃったな」とか、「ちょっと遊びすぎたな」とか、「相変わらず未熟だな」とか、必ず後悔が残るんです。制作のスピードに自分を委ね過ぎちゃって、じっくり俯瞰で見たり、もう一回検証し直したり、そういう余裕が持てなかったんですよね。今回、初めて本当に自分が満足のゆくところまで、自分を追い込めたと思います。

――それで百点満点になった。

▼はい。サウンドに関しても、コンピュータの打ち込みの音の割合は、今までの作品の中でいちばん少ないと思います。太くてロックベースなダイナミック作品に仕上がったと思います。

――コブクロの小渕健太郎さんが作詞した「Aquarium」は、とてつもなくいい曲ですね。

▼あの曲はレコーディング終盤のある夜、突然「コブちゃん、来週のスケジュールはどう?」とメールして、「来週は久しぶりに家族と旅行に行きます!」という返信を受け「了解。だったら大丈夫です」と返したら「え?どんなご用件ですか?」と。「実は、歌詞を託したい曲があるんだ」って言ったら「是非やらせてください!!!」と(笑)。彼の貴重な休日を奪ってしまったんです。

――無理させちゃったんですね(笑)。

▼小渕くんとは日本に帰るたびに会っていて、「今、こういうコンセプトのアルバムを作ってるんだよ」と話したり、最初に出来上がった「Blue Sky」を聴いもらったりしていました。彼も新曲ができると「聴いてください!」って僕にすぐ送ってくれたり、ミュージシャンシップを育んでいます。
彼は僕に憧れを抱いてくれたミュージシャンの一人で、僕が英国に移ると決めたタイミングのことも知っているし、向こうでコツコツとライブハウスをやってることも知ってくれている。この「Aquarium」という歌詞は彼ならではの視点で「我々の住むこの世界は、境界線のない自由な世界のように見えるが、まるで海の中に沈めた水槽みたいに、見えないガラスの壁で区切られている。指先がそれに触れた時に初めて知る壁。しかし見上げると、そこには壁のない空がある」というパラドックスを描いてくれた。曲を聴いたときに彼には「青」の世界が広がったらしく、海の青さや空の青さ、心の中の青さを表現してくれた。
僕の最初のイメージは「知らない何処かへ還りたい」っていう想いだったんです。イギリスから日本に帰りたいとか、家族の待つ家に帰りたいとか、そういう具体的なことじゃなく、宇宙から地球に帰還する、とか、母の元に帰りたい、とか。僕の母は天国にいるわけだから、どこか遥かな場所へ還る、というイメージかな? そんな「帰る場所っていうものをテーマにしないか」と伝えたら、彼は「青の世界」で自由や境界というこのアルバムのテーマにしっかりとフォーカスを合わせてくれました。

――僕は小渕さんの曲の中で、コブクロの「blue blue」っていう曲がいちばん好きなんですよ。それも「青」がテーマになってる。

▼彼にとっても刺激的なコラボレーションになったと思いますね。敢えて淡々と、それこそ寄せてはまた繰り返す波や光を表現したくて、サウンドもミニマルなアレンジメントにこだわりました。

――布袋さんが作詞した「Dreamers Are lonely」は、まずタイトルがすごい! タイトルの一言で、大切なことを言い切っちゃってますよね。

▼うん、こういう曲は歌い続けていかなきゃいけないな、と思っています。決してただ無責任に「夢を追いかけようぜ」っていうだけの曲じゃないんです。