BEAT主義日記 the principle of beat hotei official blog

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2010年8月 2日

* 30年越しの夢  ROXY MUSIC 追記


最近の若者は「洋楽邦楽の隔てなく音楽を聴く」と聞くが、僕らの世代は『ロック=洋楽』だった。
インターネットなどなく、情報は限られていたし、世界は今より広く、遠かった。
しかし飛行機に乗ったことはなくても、ロックを聴けばリバプールにもカリフォルニアにも行けた。
いや、宇宙旅行もできたし、幻想の世界へトリップできた。

14歳でギターと出会い、クラスの仲間とバンドを組んだ。
その頃はディープ・パープルやレッド・ツェッペリンを代表とするハードロックの全盛期だった。
「ロック好き=長髪」というった風潮で、高校に入ると必死で髪を伸ばした。
そんな中、先輩の勧めで「グラムロック」と呼ばれる音楽を聴き、衝撃を受けた。
何よりも強烈だったのはその特異なファッションやメイク。今でこそ男女の壁を越えたジェンダーレスな文化は受け入れられているが、バイ・セクシャルなムードを振りまく彼らの存在は異質だった。
ROXY MUSICもまたグラム・ロック・ムーヴメントの中から登場した、ロックの突然変異とも呼ぶべく個性的なバンドだった。
初期のアルバム・ジャケットはファッション・モデルたちのセクシーな写真で飾られ、そのビジュアルはまさしく洗練の極みだった。
そんなファッショナブルなイメージとブライアン・イーノの壊れたようなシンセサイザー・ノイズ、アンディ・マッケイの旋律を無視したかのようなフリーキーなサックス、フィル・マンザネラの独特なギターワーク、そして何よりシャウトとも呟きとも雄叫びとも呼びがたいブライアン・フェリーの歌が相まって、ロキシーは他のどのバンドとも違う、超個性派バンドの呼び名を欲しいがままにした。
一瞬にしてROXYの虜となり、バンドでコピーを始めた。
The Bogus Man、Both Ends Burning、She Shells、Do the Strand、Tokyo Joe、Let's stick togetherなどなど。
今も昔もロキシーのコピーを演っている高校生バンドは数少ないのではなかろうか。
当時流行していたJUNやMEN'S BIGIの洋服をステージ衣装にして、ロキシー気取りで地元の公民館のアマチュア・ライブに出演したものだ。

1977年、ブライアン・フェリーがソロで来日した新宿厚生年金会館でのライブは今でも鮮明に覚えている。(WOW!15歳だったんだ!)
一曲目は大好きな『Let's Stick Together』だった。
ブラック・スーツのブライアンの隣で、革ジャンにリーゼントをキメてフライングVをクールに鳴らすクリス・スペディングのカッコいいこと!まるでジェームス・ディーンのようだった。
パンクの影響もあったが、もう髪を伸ばす必要はなくなった。
クリスのように、クールにキメるギタリストになる、と誓ったからだ。

そんなROXYとの出会いがあり、パンク&ニュー・ウェイブの洗礼を受け、オリジナル・スピリットを武器に「誰にも似ていないバンドを作ろう」と結成されたのがBOΦWYだった。
「メロディアスで判りやすい歌謡パンク」などとこき下ろされたりもしたが、そんなバンドはどこにも無かったのも事実だ。
バンド後期にジャンポール・ゴルチエの衣装にこだわったのも、ROXY CHILDRENとしてのプライドだったのかもしれない。

解散後は拠点をロンドンに移し、様々なミュージシャンと交流を持った。
2枚目のソロアルバム『ギタリズム2』、遊体離脱体験を歌った「スローモーション」という曲で
どうしてもアンディ・マッケイにサックス・ソロを吹いて欲しくて、ロンドンの知人を通じてオファーしたところ、なんと快諾を受けた。
メトロポリス・スタジオにサックス・ケースを抱えて現れたアンディは、哲学者のような静かなオーラに包まれていた。
「曲のムードに同調できるまで何度かトライさせてほしい」とトラックに合わせて奏でるその音色は水彩画のように淡い光を放ち、スタジオ内はまるで無重力空間のようにフワフワと夢見心地な宇宙と化した。
名作『AVALON』のあの響きだ。
その時僕はアンディに、自分がいかにROXY MUSICに魅せられ影響を受けたか、そしていつか夢が叶うなら一緒にステージに立ちたい、という想いを伝えた。
アンディは優しく
「その日がくることを楽しみにしているよ」
と言ってくれた。
そしてアンディは僕の夢を叶えてくれた。

その後アンディはメールで連絡をくれ、来日の際には我が家を訪ねてくれたり、ディナーを共にした。
今回のワールド・フェス・ツアー前に
「久しぶりに日本に行くよ。今回は妻や息子も一緒に連れて行きたいのだが、どこかおすすめの場所はあるかい?」
とのメールをもらい
「京都はどうですか?大都会とはひと味違う日本の情緒を是非味わってもらえると思う」
と返した。
そしてなんと無謀にも自ら案内役をかってでてしまった!
たった二泊三日の短い滞在だったが、共に日本の美を眺め、見つめ、感じたその時間はかけがえのないものだった。
人任せににせず彼らを案内できて本当に良かった。。

そんなメールのやり取りの中で、今回のフジロックでの競演は決まった。
アンディからブライアンやフィルに「日本の友人のロキシー狂のギタリストの夢を叶えてあげないか?」と提案してくれたのだ。
お二人も、そしてバンドのメンバーも、スタッフも全員賛成してくれた。
ロキシー側からのオファーをフジロックの主催者であるスマッシュの日高さんも快く受け入れてくださった。心から感謝申し上げたい。
リハーサルができないため、リスボンでのショウの音源をMP3で送ってもらい、進行を確認した。
参加曲は3曲。

Editions of You
Let's Stick Together
Do The Strand

ライブテイクと合わせながら家で練習していたら、高校生の頃必死でコピーをしていた自分を思い出し、泣けてきた。

フジロック前夜、アンディ一家と麻布の行きつけのイタリアンで食事をした。
12歳の息子パーシーとも京都旅行で意気投合できた。東急ハンズで僕が表紙の「大人の科学」という本を見つけ購入したという。
「明日はどんなファッションでステージに上がるんだい?」
とアンディ。「アンディは?」と訊くと「リチャード・ジェイムスにするかオズワルド・ボーティングにするか迷っている」と言った。
その夜のアンディは鮮やかなダーク・オレンジのスーツにブルーのシャツ(オズワルド!)に焦げ茶のニットタイ。
ROXYとファッションを語るには10年早いが、今回の滞在でもアンディのダンディぶりには男惚れした。
京都旅行では生成りの麻のスーツに水色のシャツ、ブルーにピンクのボーダー・ストライプが入ったニットタイ。
とにかく色の合わせ方がセクシーで上品で、英国ダンディズムの手本を見た。

そしていよいよフジロック本番日。
我々は車で一足早く会場入り。ケータリング・ルームで食事をとっているとROXY到着とスタッフが動き出す。
挨拶に行こうと思っていたらブライアン・フェリ−が入ってきた。
続いてフィル・マンザネラもケータリングの列に並ぶ。
まずフィルに御挨拶すると「今日をとっても楽しみにしていたよ!そして君にプレゼントがあるよ」と彼の愛用の赤のファイアー・バードのピンバッジを手渡してくれた。
ブライアンは独特の近寄りがたいオーラがありいつも緊張するのだが「ホテイ!いよいよだね!」と優しく微笑んでくれた。
ROXYの楽屋にて曲の進行の打ち合わせ。ソロの順番を決める。
しかし「Let's Stick Together」の進行に関しては「ブライアンのみぞ知る」とのこと。ますます楽しみだ。
残念ながら雨が振り出してしまったが、ROXYの出番まであとわずか。
迷いに迷った末、LANVINのシルバー・グレーのスーツに白いシャツを選んだ。ギターは赤のストラトにしよう。
バスの出発口でメンバーを待っているとフィルが現れた。
なんと!シルバーのスーツに白のシャツ!そして彼は赤いファイアー・バードだ!
これはいけない!と慌てて楽屋に戻り、予備で持ってきていたラルフローレンの黒のスーツに着替え、お気に入りの紫のニット・タイを結んでステージ裏の楽屋へ向かう。
本番5分前。ブライアンが到着。な、なんと!黒のスーツに紫のタイを結んでいる!
急いで赤のタイに変える。
そんな独りよがりな気遣いを見て美樹さんが笑っている。
ショウが始まった。

ROXYが目の前にいる。

そしてその中に僕は飛び込んで行った。

ブライアン・フェリーが、フィル・マンザネラが、そしてアンディ・マッケイが隣にいる。

Let's Stick Togetherの僕のソロで、ブライアン・フェリーがダンスしている。

夢のような、しかし夢ではない3曲が終わりステージ袖へ。。
「ホテイ!最高だったよ!」とブライアンが背中を叩いてくれる。
その光景をアンディがニッコリ微笑んで見つめてくれている。

終演後の楽屋。
用意されたシャンパンとワインで乾杯。
フィルが「君のステップを今度コピーさせてくれよ!」と笑う。
アンディが「ウェルカム・トゥ・ロキシー・ミュージック」と祝福してくれる。
もう一人のギタリスト、オリーはブライアンの息子の同級生という。
僕のゼマティスを見て「どこのギターですか?」と興味津々。
「君の誇るべき英国の宝だよ」
和気あいあいとした楽しい時間が過ぎてゆく。
ROXYの面々は翌日移動の為、苗場からそのまま成田へ。ハードな行程だ。
僕らは雨の苗場を後にして、途中缶ビールを買い、ROXYのライブアルバムを聴きながらナイト・クルージング。

『夢』は叶えてこそ『夢』になる。

そして『夢』は待つだけでは決して叶わない。

30年前にタイムスリップして、厚生年金の客席で踊っている自分のに向かって、こう言ってあげたい。

「夢を信じなさい」と。


(P.S. フジロックでのROXYのステージを楽しみになさっていた皆さんには、とんだ邪魔者の乱入でガッカリさせてしまったかもしれません。
30年来のロキシー・ファンの夢が叶った夜として、どうか御容赦いただけますように)

ANDY.JPG

@TOKYO STATION いざ京都へ

BEFOR THE STAGE.JPG

@ FUJI ROCK ステージ脇でROXYを観ながら出番を待つ。

ROXY.jpg

@STAGE フィルもブライアンも185センチ以上の長身。
写真では見えないが、二人とも恐ろしくお洒落な靴を履いていた。

BRIAN.JPG

終演後、楽屋にてブライアンと乾杯。とにかくセクシーな人だ。

PHIL.JPG

ヘッドフォンがプリントされた素敵なTシャツのフィル。
デイヴ・ギルモアの話や、レスポール・カスタム・ショップの話、オリーも交えてギタリスト談義に花が咲く。



そして今夜は長岡の花火大会を観た。

「一度だけの人生だからこそ 世界一の花火 打ち上げたい」(from "BORN TO BE FREE"by HOTEI)

ドーンと腹まで響くデッカい花火。

また涙が出たよ。

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