BEAT主義日記 the principle of beat hotei official blog

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2015年2月アーカイブ

「毎年素敵なサプライズがあるのは嬉しいけど、そろそろお互い内緒と気づかぬフリをするのも疲れてきたと思わない?
 プレゼントを贈る方も気を使うだろうし、今年は家族だけで食事しようよ」

「そうね。素敵なレストランを探しておくわ」

そんな会話をしたものの、数日前には近しいスタッフがなんとなく怪しいそぶりを見せ、
なるほど、きっと数名が集まってクラッカーでも鳴らしてくれるのかな?
とまた気づかぬフリをしながら迎えた2月1日。僕の53歳の誕生日。

その日はイスラム国の暴挙に揺れる世界のニュースに絶望し、そんな日に誕生日を迎えたことが申し訳ない気分だったが
53年前の母と父は、世界で一番幸せだったと信じ、母の位牌に向かって手を合わせ「ありがとう」とつぶやいた。
今年に入ってから美樹さんのライブの準備等でなかなか家族揃って食事に出かける機会もなかった。
グリーンのタータンチェックのタキシードジャケットに黒のニットタイ、タキシードパンツに着替えて気持ちを切り替える。
定刻通りに到着したタクシーの助手席に乗り「レストランはどこ?」と聞いても「ピカデリー」だよ、としか答えぬ女子二人。
「さて今夜はお祝いのディナーだからランチを我慢したから腹ペコだぞ!」と上機嫌なバースデー・ボーイ。
黄金のイルミネーションが美しいHarrodsを越え、冷たい冬の空気似合うロンドンの街並みを抜け、Green Parkへ。
すると思いもよらぬ場所でタクシーは止まった。ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツだ。http://www.royalacademy.org.uk/
予想もしなかったシチュエーションに「え?この中にレストランなんてあるの?」と驚くバースデー・ボーイ。
建物の端の小さな入り口の扉を開けると「ミスター・ホテイ?」とクロークボーイ出迎えてくれた。
コートを預け静かな細くて薄暗い廊下を歩く。
「レストランはこの奥にあるのかな?」と従業員に訊いても、ただニコっと微笑むだけ。
一つ目の部屋を通り越し、二つ目の部屋を過ぎようとして中をちらりとみた瞬間、サプライズは成功した。
そこには80人ものロンドンの仲間たちが、その夜の仕掛け人として僕を待ち構えていてくれたのだ。

14歳の時、群馬の高崎という町でロックンロールと出会ったその頃から僕は
『夢見るロンドンボーイ』だった。
BOØWYのベルリンレコーディングの帰りに初めてロンドンを訪れたのは1985年。
あれから30年の月日が過ぎたということになる。

初めてのロンドン滞在時はヴィヴィアン・ウエストウッドのワールズ・エンドを目当てに、キングスロードを何往復しただろう。
もちろんその頃はヴィヴィアンに行っても買えるのはソックスくらい。空っぽの財布に涙目の僕はレコード会社のディレクターやプロデューサーから数万円を借り、古着屋で革ジャンを買った。
脱いだらそのままの形で倒れないくらい硬かったが、当時の僕には世界一かっこいい自慢の革ジャンだった。

会場で懐かしい顔を見つけて「変わらないな!」「君も全然変わらないよ!」と肩を抱き合う。
ジグジグ・スパトニックのニールXやジーザス・ジョーンズのメンバー。生年月日が全く同じのNOKOもいる。
お互い顔は少し痩けて髪には白いものが混じり、抱擁すると背中の厚みに過ぎた年月を感じる。
大切なゼマティスを譲ってくれた楽器会社の社長やあの日のパンク少女も今や紳士と淑女だ。
家族で二年半前に移住してから出会ったミュージシャンたちや音楽業界の友人たち。
インコグニートのブルーイやスウィングアウト・シスターズの二人、ギャング・オブ・フォーのアンディ・ギル、そして腕利きのスタジオ・ミュージシャンやエンジニア。
異国に暮らす同じ日本人の先輩や仲間達もたくさん駆けつけてくれた。
英国、フランス、ロシア、インド、アメリカ、スペイン、フィンランド、ドイツetc...etc..
国籍こそ違えど、皆ロンドンを愛すロンドナーだ。
この二年半でこんなにもたくさんの友人をこの街に持つことができたことが幸せで、ただ幸せで、
胸がいっぱいになった。

笑顔あふれる和やかなパーティーの途中、英国のマネージメントを担当してくれているアーロンの挨拶に続いて美樹さんが紹介される。
数日前、初めてのロンドン公演で英語でMCをすることをあれほど重荷に感じていた彼女が、はにかみながらゆっくりと英語で話し始めた。

「まずはみなさん、私の英語を大目にみてくださいね(笑)今日はみなさん忙しい中、HOTEIさんのパーティーに参加してくれてありがとう。みなさんのおかげでサプライズは大成功しました!こうして素晴らしい仲間に囲まれて嬉しそうにしているHOTEIさんを見て、私もとっても嬉しいです。みなさん、愛してるよ!HOTEIさん、愛してるよ!」

会場からの大きな拍手に笑顔で応える美樹さん。とても素敵なスピーチだった。
(美樹さん、あなたの英語はチャーミングですよ!)

誰もが自分が歳をとることが信じられないものだ。

大人になるのが少し照れ臭く、いくつになっても子供のままの自分が申し訳なく、
そして二度と戻らない季節の記憶を辿れば、切なく悲しい。

と同時に、あの日の自分より優しくなった自分が愛おしく、
全力で走り抜けた若き日々がヒリヒリと誇らしい。

53歳になった僕の目標を一言でいうと「健康第一」。

ロッカーが健康を気にするなんてカッコ悪い、と昔の自分なら言っただろう。

しかし今は違う。

「健康じゃなければ思いっきりロックもできないだろう?」

優しさが強さと感じさせる大人になりたい。

ワイルドなギターが優しく聞こえるギタリストになりたい。

いくつになっても少年のままの自分でありたい。

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英国でご活躍なさっている川秀子さんによる奇跡のARTケーキ。

(All Photo by Kazuyo Horie / Thank you so much!!!)






最高のサプライズを企画、そして参加してれたみなさん、ありがとう!

日本からもたくさんのバースデーメッセージが届きました。
この場を借りて、「みなさん、ありがとう!!!」








最後の更新を見たら昨年の10月11日、ツアーのリハーサルの様子を伝えるもの。
なんと4ヶ月も更新していないのだから我ながら呆れる。
更新を待っていてくださった方がいたとすれば大変申し訳ない。
このブログがあることも忘れられているかもしれないけど、近況をご報告させていただきますね。

まずは新年のご挨拶からスタートすべきかな?(苦笑)
4ヶ月分を詳しく書くと絵巻クラスの長文になりそうなのでダイジェストで。

最後の書き込み「ツアー、たまらなくカッコいいよ!」の言葉通り。
"Into the Light tour"(別名『たまらなくかっこいいツアー』)も無事終了。
ドイツから参加してくれた照明チーム「KINETIC LIGHTS 」(http://www.kinetic-lights.com/)の空間を生かしたインスタレーション演出は、今までのロックコンサートの予定調和を打ち破り、モダンでクールな効果をもたらしてくれた。
インストが半分を占めるセットリストに、拳を上げ日頃の鬱憤を晴らしたいオーディエンスには8ビートが足りなかったかもしれないけど、トニー・グレイの驚異的なベースプレイ、ザッカリー・アルフォードの野獣のようなビート、岸利至の緻密なプログラミングと合わせて、最新のHOTEIが最高のHOTEIであることを証明できたと思う。
ただいま映像編集中。

WOWOWでの『布袋寅泰 JAPAN TOUR 2014 -Into the Light-』は
2/22(日)よる9:00から放映です。どうぞみなさんでお楽しみください。
http://www.wowow.co.jp/pg_info/detail/106196/index.php?m=01

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Photo by 山本倫子(MichikoYamamoto)

GQ MEN OF THE YEARという栄えある賞もいただき...

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年末はBeat Crazy会員限定ライブ『B.C. ONLY』を東京、名古屋、大阪で開催。
亀田誠治、カースケとの3ピースで熱く盛り上がった。スリーピースはいいね。音と音の間を楽しめる。
Beat Crazyのメンバーは家族のようなもの。忘年会みたいなムードで笑顔の絶えない素敵な時間だ。
みんなありがとう。次回も楽しみ。

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クリスマスは家族で過ごし、年末はギリギリまで美樹さんのレコーディング。
大晦日にロンドンに戻り、BBCで噂の花火を観る。
日本では花火は夏の風物詩だが、こちらではガイ・フォークス・デイと呼ばれる11月の催しを中心に
澄んだ冬空に響く乾いた音とクリスタルのような光が印象的。
BBCでの年越しを飾るのはフレディ亡きあとも国民的人気を誇るQUEENの演奏。
アダム・ランバートの好パフォーマンスも印象的だった。


年が明けて2015年。


ロンドンで家族と過ごす新年はとても穏やかだった。
お餅を焼いたりお雑煮を作ったり、やはりここにいても日本のお正月を味わいたい。
東京〜ロンドンの時差はきつく、毎回戻るまでの数日は早起きしてしまうのだが、
ロンドンの冬は朝の8時を過ぎても真っ暗だ。半郊外のわが町では早朝ジョギングは難しい。
夕方は4時を過ぎるとまた暗くなる。燃えるような朝焼けと夕焼けは息をのむほど美しいが、朝晩はかなり冷え込み、愛車の窓は凍る。
フロントガラスの氷かきから始まる毎日。東京では考えられないことだ。

1月はホリデー明けでなかなかエンジンがかからず、挨拶や打ち合わせなどでのんびりしているとあっという間に時は過ぎるもの。
しかし今年は違った。
今井美樹の初めての日本以外での公演、『Miki Imai New Year Concert@Cadogan Hall』が1月23日に行われるからだ。

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今回のコンサートは前作のユーミンのカバーアルバム「ダイアローグ」のプロデューサーであり、僕の20余年来の友人かつ音楽パートナーのサイモン・ヘイル氏がピアノと弦アレンジ担当。ロンドン在住で幅広いジャンルでのセッションでご活躍のバイオリニスト佐藤琴乃さん(http://www.kotonosato.com/)を中心としたカルテットの編成にしたのは、会場のカドガンホールが教会を改修した美しい佇まいとアコースティっクで豊かな音響に恵まれた会場であるからだ。
美樹さんの性格はウサギとカメの物語で例えるなら間違い無くカメ(僕は間違い無くウサギ)、慎重で注意深く、石橋を叩いて叩いて叩いて、さらにまた叩いて叩いて腕を組み、さて次はどんな叩い方がいいかを考えるタイプ(などと言ったら彼女はきっと反論するだろうけど)。
ロンドンに移り住んでから何度か「いつか君もこの町でライブをやるべきだよ」と僕が言うと
「それはあり得ない。英語も喋れないし、ここで私が日本語の歌を通じて観客のみなさんに何を伝えるべきか判らない」と彼女は頑なに拒み続けてきた。
僕の思いに根負けし、重い腰を上げてブックしたこのコンサート。たった一紙の日系向けフリーペーパーに広告を載せただけにも関わらず、900枚のチケットは瞬く間に数日間で売り切れた。きっとそれはロンドンに暮らす多くの日本人の方々が今井美樹の歌、そして彼女の歌を通じて豊かな日本の心を感じたい、と思っていただけたからに違いない。サイモンとの打ち合わせ、カルテットとのリハーサル。本番日が近づくにつれ高まる緊張感。前日まで英語でのスピーチがうまくできないと毎日夜中まで頭を抱えていた彼女だが、記念すべき初ロンドンコンサート当日、彼女に神が降りた。

静まる会場が彼女の登場とともに暖かな拍手で満たされる。ホール全体が音楽と一体となり豊かでふくよかな響きに包まれて彼女は歌い始める。
一言一言を大切に手紙にしたためるように歌う彼女の歌は、日本語の美しさがメロディと共に舞っているようで、会場の英国人にも間違いなく届いていた。
曲が終わるたびに溢れる拍手が彼女の気持ちを満たし、高めてゆくのがわかる。
時にミュージカルのように、そして時に前衛舞踏音楽のように、エレガントで色彩豊かなサイモンのピアノとカルテットのマリアージュ。
天国への招待状も届いたはずだ。彼女の父上も僕の母も、きっとこの会場にいる。
「プライド」のイントロで会場の熱気は最高潮に。アンコール曲「太陽のメロディー」は口蹄疫で苦しむふるさと宮崎のために作った曲だが、異国に暮らす日本人のそれぞれのふるさと、そしてこのロンドンという街をもうひとつのふるさととして愛して止まぬ皆の心を一つにした。

「どんな雨にも負けないと この街いっぱいに降り注ぐ 太陽のメロディー」

鳴り止まぬ大きな拍手。スタンディング・オベーション。そしてまた拍手。

ステージの彼女は溢れる涙を隠すために客席に背を向けた。

そしていつもの天使のような笑顔で振り返ってくれた。

客席のど真ん中で、僕も笑顔で泣いていた。


"Take the first step in faith. You don't have to see the whole staircase, just take the first step."

まず何も疑わず最初の一段を登りなさい。目の前の階段全体を見る必要はない。
とにかくまず一段目に歩を進めなさい。


キング牧師の名言である。
最初の一歩がどれだけ重くても、その一歩を進まずして二歩目はない。

コンサート終了後、美樹さんは言った。

「私、またここでやりたい!」




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Photo by 堀江和代(Kazuyo Horie)


というわけで、あっという間に1月が過ぎ、(4ヶ月が過ぎ...)

昨日僕はまた誕生日を迎えたのでした。

感動のシークレットパーティの模様は次回。
たぶん、数日後 ...
少なくとも次の誕生日が来る前に。